『虎に翼』の主人公寅子の得意な歌は『モンパパ』である。『モンパパ』の歌詞を眺めながら、寅子がこの歌を口ずさむ時、この歌は物語にどのような影響を与えるのか、を考えて行こう。
『モンパパ』とは
楽曲『モン・パパ』。
これは、仏喜劇俳優でシャンソン歌手としても知られるジョルジュ・ミルトンが、映画「巴里っ子」の中で披露した「C’est pour mon papa」に日本語歌詞をつけたものである。
宝塚少女歌劇団の俳優や、喜劇俳優の榎本健一 (エノケン) と二村定一が歌って大流行した。
歌詞
以下は、榎本健一と二村定一が歌った歌詞である。
【1番】
二村:うちのパパとうちのママと並んだ時、大きくて立派なはママ
うちのパパとうちのママと喧嘩して、大きな声で怒鳴るは、いつもママ
榎本:いやな声で謝るのは、いつもパパ
二村:うちのパパ 毎晩遅い
榎本:うちのママ ヒステリー
二村:暴れて怒鳴るは いつもママ
榎本:はげ頭下げるは いつもパパ
二村:でたらめ言う それはパパ
榎本:胸ぐらを取る 二村:それはママ
二村、榎本:パパの身体は 揺れる揺れる クルクルと回される
【2番】
榎本:うちのパパとうちのママと並んだ時、大きくて立派なママ
うちのパパとうちのママと喧嘩して、大きな声で怒鳴るは、いつもママ
二村:小さな声で謝るのは、いつもパパ
榎本:うちのパパ コブが出る
二村:うちのママ ツノが出る
榎本:後から笑うのは いつもママ
二村:メソメソ泣くのは いつもパパ
榎本:あ のんきな大将 それはパパ
二村:ヒスの親玉 それはママ
榎本、二村:パパの嬉しそうな時は ニコニコとえびす顔
内容
妻の尻に敷かれ、家庭内でいつもとっちめられている夫の様子を、子供の視点でコミカルに歌った曲だ。
『虎に翼』で『モンパパ』が歌われた場面
この『モンパパ』は主人公寅子の十八番の歌であり、既に作中何回も登場している。← 子どもがこういう歌を覚えると煩わしいんだよね~ @( ;∀;)@
第1週 4話 花江と直道の披露宴
『モンパパ』が初登場して私たちの度肝を抜いたのは、4月4日に放映された第4話でのことである。← はやっ!
昭和6 (1931) 年吉日、親友の米谷花江 (森田望智) と兄の直道 (上川周作) の結婚披露宴の席でのこと。
酔っ払った父、直言 (岡部たかし) に促された寅子が得意の歌『モンパパ』を披露することになる。
この「かかあ天下の歌」を歌いながら寅子は会場を見回す。
……と、男性陣は全員酔っ払い立ち上がり、上機嫌である。
その傍らで、女性たちはいずまいを正したまま、乱れることなくお澄ましして、自由に振る舞うことを抑制した状態 (=寅子の言う「スンッ」の状態) にある。
歌いながら寅子は、なんともやりきれない悔しさの込み上げてくるのを感じていた。
歌の内容とは真逆な披露宴の光景に、次第に怒りを滲ませていく寅子の『モンパパ』
その食い違いぶりが、男尊女卑の深刻さを鮮明にしたのであった
2回目 第6週 28話 崔香淑との別れ
兄に思想犯の疑いが掛けられ、留学生の崔香淑(さいこうしゅく:ハ・ヨンス) が朝鮮に帰らなくてはいけなくなった。
思い出にと、6人 (明律大学でともに学んだ5人とお付きの玉)で海へ行く。
寅子、崔香淑を始め、よね(土居 志央梨)、梅子さん(平岩 紙)、涼子さま(桜井 ユキ)、お付きの玉(羽瀬川 なぎ)もいる。
崔香淑は最後のお願いとして寅子に『モンパパ』を歌うことを促す。
どうやら寅子は、明律大学でも常々『モンパパ』を歌っていたようである。@(//∀//;)@ ← そういうとこだけ似ている猿子
いや、楽しいんだよ、この歌。
ママがパパをこてんぱんにやっつける様が単純に面白い。
無邪気な子どもの心を持った寅子が、ちょっとおどけながら歌いたがるのも納得が行く。
無邪気な子どもの歌
第6週 30話 高等試験に合格した祝賀会の席で
高等試験に合格し、日本ではじめての女性弁護士になった寅子。
上記、海で集った同級生は、寅子以外ひとりも受かっていない。
祝賀会の前に寅子の家を訪れたよね。
よねは口述試験で、男装を「トンチキな格好」と言われ反論したことが、落ちた原因のひとつと考えていた。
よねはそれを告げて、寅子の家を後にする。
その後ろ姿を見送りながら、寅子は……『モンパパ』を口ずさみ出すのだ!← ここで来るとは~ @( ;∀;)@
波音とともに、寅子の脳内風景は一瞬にして、6人が最後に集った海岸に飛ぶ。
同級生6人が無邪気にはしゃぐ風景。
明律学校女子部でよねと初めて出会った日 (第2週 6話)
明律学校女子部の同級生と裁判を傍聴した日 (〃 9話)
明律学校女子部の同級生たちを笑わせる寅子 (〃 10話)
男子生徒になじられた法廷劇 (第3週 12話)
独饅頭事件を検証した日 (〃 15話)
明律大学へ初めて登校した日 (第4週 16話)
熱心に授業を受ける5人の姿……
…… 不意に打ち切られる寅子の歌声。(祝賀会開場) 記者「流石日本で1番優秀なご婦人方だ。」
寅子「はて?……、(抑圧されているが故に、本来の能力が発揮できない大多数の女性たちの存在を述べてから)……、
でも今、合格してからずっともやもやしていたものの正体が分かりました。私たち、すごく怒っているんです。…… 法改正がなされても結局女は不利なまま、女は弁護士にはなれても裁判官や検事にはなれない、男性と同じ試験を受けているのにですよ。女ってだけでできないことばっかり。ま、そもそもがおかしいんですよ。元々の法律が私たちを虐げているのですから。
生い立ちや、信念や、格好で切り捨てられたリしない、男か女かでふるいにかけられることがないような社会になることを、私は心から願います。
いや、みんなでしませんか。しましょうよ。私はそんな社会で、何かの1番になりたい。その為に良き弁護士になるよう尽力します。困っている方を救い続けます。男女関係なく。」
4話の披露宴で『モンパパ』を歌った時のように、寅子の声は次第に怒気を含んで行った。
『モンパパ』は、改めて男女の不平等を突き付けてくる歌と化すのである
『モンパパ』と男女不平等
そもそも不思議な魅力を持つ『モンパパ』は、意図するとしないとに関わらず、何を示唆し、どのような理由で大流行したのであろうか。
以下『モンパパ』の特徴として、3点をあげておこう。
男女の力関係
力関係が逆転する面白さ
「明治民法」の元では、家でも社会でも権利は男性のみに与えられていた。
女性は家で家事・育児にいそしむことが、生きる全てと限定されていた。
法律でそう定められていたのだ。
そのような中で『モンパパ』は、家で父親よりも威張って振る舞う母親を大袈裟に歌っている。
現実に若干の「かかあ天下」はあったとしても、この逆転ぶりが笑いを誘った。
抑圧されて弱い立場にある女性が、歌詞の中だけでは「パパ」をぐるぐる振り回す力を持つ、という意外性がおかしみを持つ。
男性の絶対的優位
『モンパパ』は、女性はおろか男性にも、大喜びで受け入れられた。
それは何故だろう?
女性の優位性は家庭内に限定されている
いわゆる”殿方”には余裕があるのだ。
圧倒的な男性優位の社会にあって、この『モンパパ』の歌詞は、笑止に値する。
女性の僅かな優位は家庭内だけに限られている。
いや、その家庭内ですら「夫の給料で暮らし」「全ての財産が夫の所有となり」「相続の権利も与えられない」当時の女性にとっては、夫の顔色を窺うしかない場であった。
これがもし、社会のスタート時点から、女性が男性の立場に並んだとしたらどうだろう?
女性全員が入社試験を受け、男性と同様に採用され昇進していくとしたら?
女性全員が普通の勤め人として、生涯雇用の立場に並んだとしたら?
男性は笑ってなどいられない。
女性に対する揶揄
さて『モンパパ』の中でママは、「ヒステリー」であり、パパの「胸ぐら」をつかみ「ツノ」を出す。
女性を揶揄した歌詞である
「ママ」と釣り合いを取るために、「パパ」をコケにした歌詞も並んではいる。
が、『モンパパ』は男性を制圧する女性の姿 (また男女両者) をひどく辛辣な言葉で歌っているのだ。
その手の女性をからかいに満ちた歌詞で歌い、『やれやれ参ったな』と男性は降参した振りをしてみせる。
望まない女性像を下品に仕立て上げ嘲笑する、その意地悪さがこの歌にはある。
6話の披露宴で親族の女性たちが「スンッ」として見せたのは、男性の嘲笑に対する不快感の表れ、でもあった筈だ。
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『モンパパ』と寅子
さて、今週より『虎に翼』は7週目に入り、物語はトラックの1/4周を過ぎた。
寅子もいよいよ弁護士見習いとなって、月曜日がスタートした。
言ってみれば『モンパパ』で始まり『モンパパ』で幕を閉じた1/4クールであった。
そうして私は、寅子が再び『モンパパ』を口にすることはないように思う。
何故なら寅子は1/4クールの最後で、“『モンパパ』の歌詞が内包する笑えなさ”に気付いてしまったからだ。
何よりもこの後日本は、この物語は、男女の別など超えて『人権を踏みにじる』戦争へと突入して行く。
第7週目以降のモンパパ
「これ以降は歌わない」って言ったのに、寅子、歌っちゃったよ~@(||∀||;)@◦◜←投げられる石
第8週 39話 ← よくも悪びれずに;
優三との子どもを身ごもりながら、唯一の女性弁護士として気を張り詰める寅子は、講演会に向かう途中でとうとう倒れてしまう。
上記事情を知ったよねに反発されながら、寅子は弁護士を止めて出産する。
我が子「優未」を背負い海を散歩しながら、つぶやくように『モンパパ』を……。←学生時代への郷愁か?『モンパパ』側に身を翻した諦念か?
第8週 40話
や、やられた~ @(+∀+)@
いや、歌ってないよ、歌っていないんだよ、BGM(ピアノ演奏)として出て来ただけなんだけどね、そこを聞き逃さずに しぶしぶ 書くっちゅうのが、私の良心なんだよー!← 思わず絶叫;
弁護士を辞めた寅子のもとへ、後輩の小泉が訪ねてくる。
聞くと、弁護士になるための高等試験も実施されず、今後女性弁護士が誕生する道は閉ざされたという。
寅子は心に蓋をして、とにかく戦争を乗り切ることだけを考えよう、と日々の生活に精を出す。
……と、この時に流れているBGMがず~~~っと『モンパパ』。← 米津の主題歌が流れ出すまでね~、@(T_T)@ドドー!
第9週 42話
歌った~ @( ;∀;)@ ヒー!NHKからの嫌がらせ?← 受信料払ってますから~
1946年、夫であり、優未の父親である優三はまだ帰って来ない。
寅子は、出征前の優三とデートをした河原で、優三との間の一粒種である優未を負ぶいながら小さな声で『モンパパ』を口ずさむ。← ただの慣れ親しんだ歌って具合ですか?
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『モンパパ』を無心に歌える時代の到来 第13週65話!
この日を待っていましたよ@( ;∀;)@!← 開き直り;
この第13週では~、寅子の明律大学時代の同級生大庭梅子が、新しい民法のもとに女性の権利を主張。
というか、古い明治民法によって女性が負わされていた「家族の世話」「義両親の世話」を遂に放棄!
新しい民法下では、女性に依らず男性にも「助け合う義務」が生じたのであった。
新しい民法下 (憲法下) では、国民 (男女) はみな平等なのである。
…… という訳で、茨田りつ子(菊地凛子)を迎えた『家庭裁判所広報週間』は大成功を収めたのであった。
その夜、事務所での飲み会の席で多岐川が、
「よし!佐田(寅子)くん、歌え!」と言った時には私、めっちゃ嫌な予感がしたね~ ← 止めて~って言ったよ
@(||_||)@ ……で、案の定『モンパパ』。
寅子「……亡くなった夫のことを思い出しました。きっと、私の働きっぷりを褒めていてくれると思います。」
『モンパパ』スタート♪
以前のように途中で怒りが込み上げることもなく、何のわだかまりもなく、屈託なく、寅子は『モンパパ』を歌った。
男女が平等になったからこそ、真の面白さを発揮する『モンパパ』
やっぱり寅子の愛唱歌は『モンパパ』だ。
第17週 85話 娘に引き継がれる『モンパパ』
@(T_T)@ ← 寅子の『モンパパ』がひと段落して、すっかり油断していた猿子(笑)
『モンパパ』、寅子しか歌わない、と思ったら大間違いよー!← 八つ当たり
寅子の愛唱歌である『モンパパ』は、寅子の娘の優未にしっかりと受け継がれていたのであった。
優未「お絵描きもお料理も好き。あと歌うのも!」← おいおいおいおい!
寅子「あら!そうなの⁉優未の歌、聞かせて欲しいわ」← 止めてくださいっ @(>_<)@!
優未♪うちのパパとうちのママがなーらんだ時ー♪
第21週 105話
めでた~い!@( ;∀;)@ ← 涙目
寅子の再婚 (のようなもの) を祝って、弟の直明は、明律大学女子部の同窓生たちを集めたのだ。
法服姿のよね、轟、梅子、涼子、香淑/香子に、先輩の久保田と中山、さらには玉も勢揃い。
それぞれに近況を報告し合い、満足の行く自分を達成できている喜びに浸る。
その時だ!寅子が、
「……海!」← すかさず『モンパパBGM』スタート~ @( ;∀;)@ ははは~
よね「はあ!?」
「きょうはもう遅くて無理だけど、次はみんなで海に行きましょうよ。今度は綺麗で青い」
同窓会の盛り上がりとともに、めっちゃ陽気にアレンジされた『モンパパ』が、のほほんと流れたのであった~やられた~
もう普通に想い出の歌じゃ~ん♪
更に恐ろしいのはね、次回は、前回の海に行っていなかった轟とお2人の先輩方も混ぜて行こう!とイヤに具体的な計画を練った後、たまが、
「そこでまた寅子さんに (モンパパを) 歌って貰いましょう?」← めちゃくちゃ余計な発言だね~ @( ;∀;)@
ええ、ええ。今から次回モンパパに向け、スタンバイOKですわ!← ヤケ @( ;∀;)@
………。
話は変わるが、今年のNHK紅白歌合戦では、
米津玄師には『さよーならまたいつか!』を ← もう当確でしょーよ!@(T-T)@ お待ちしております!
伊藤沙莉には是非アカペラで『モンパパ』を歌っていただきたい!← 歌としてはいい!@(゚∀゚)@ ← だったらゴチャゴチャ言うなよ~
最後に、『モンパパ』を歌いたい方々必聴です!← 実は微妙な節回しが続き歌いにくいw!
ユーチューバーのjinsongs2さまが『モンパパ』をカバーされています。
細部までクリアに再現されていますから、これで『モンパパ』を覚えましょう(爆笑)。どうぞっ!↓
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