認知症介護歴18年目の私が、今までの経験と行った工夫とを総動員して、皆様のお力になれればとお話いたします。
私が行っている認知症の判断基準
認知症だか物忘れだかの判断が難しいと言われているのは、『認知症 = 忘れること』というイメージが強いからです。
だが実際はそうでもありません。
『認知症 = (体験が)消えること』と捉えると判断し易い、と私は思います。
実母の認知症も上記判断基準を使って、初めて出現したその瞬間に、家族全員がその症状の異質さゆえに、
『認知症だ!』と気付いたものでした。
認知症と物忘れの簡単な見極め方
『物忘れ』は一旦忘れてもまたその体験を思い出すことができます。
一方で、ご本人の『直前の体験』がそっくりそのまま無かったことになってしまっていたら、『認知症』だ、と私は判断しています。
以下、①~⑤のケースを参考にしてください。
ケース①
(帰宅後) 私、鞄をここに置かなかったかしら?
ええっ!
あ!ここにあったよ。
ああ、そこに置いたんだったわ
『帰宅後に鞄を置いたという体験』は覚えているから
ケース②
お寿司屋さんにお寿司を注文してちょうだい。
えっ?さっき(目の前で)電話で頼んだよ。
そうだった?
『家族が寿司を注文した』という体験そのものがぽっかり消えているから
ケース③
この頃物忘れが激しくなっちゃって!ほら、投手と打者と両方できる子、なんて名前?
大谷翔平?
そうそう、そんな名前だったわね。
『大谷翔平が活躍しているという最近の出来事[=間接体験] 』を具体的に覚えているから
ケース④
あんたきょうは歯医者へ行くんだっけ?
えっ?違うよ。耳鼻科だよ。
そうだったかね?
『家族が病院へ行くということを聞いた、という体験』は覚えているから。
ケース⑤
さ、朝言った通り一緒に病院へ行こう!
え?きょう病院へ行くの?
『病院へ行こうと家族から言われた』という体験そのものがぽっかり消えているから。
物忘れの場合は、「病気」ではなく単なる「老化」なので気にする必要はないです。
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認知症の判断が難しい理由
理由①
ただし上記基準を用いても、場合によっては判断し辛いこともあります。
それは、認知症かもしれない方が別世帯で暮らしている場合です。また今は、多くの方々がそのような生活形態を取っています。
同居であれば普段の観察量が多いので、周囲も微小な差異に気付くことができます。また、ご本人も周囲にいる人間を家族と認め気を許しています。
しかしこれが別居していて年に2、3回 盆と正月に顔を合わせる程度だと、見極めは少し難しくなって来るかもしれません。
認知症者はそれが初期であっても、自分自身の中の異変を無意識下に感じ取っているものです。すると、それを相手に気付かせないように警戒する訳です。← 『老い』を見せることは『弱点』を見せることになるからです。← 本能 @( ;∀;)@?
年に2、3回程しか帰省できないあなたは、申し訳ありませんが、認知症者にとっては他人に近い存在です。
『老い(=弱点)』を見せる訳にはいかないので、あなたには『異変』を感じ取らせないようにするという訳です。
理由②
更に言うと、
認知症者は健常者であるように取り繕うのが非常にうまいのです。 ← 経験者は語る、だよ~ @( ;∀;)@
認知症者の居場所には、それを悟らせない小道具がさり気なく配置されています。
- 分からなくなってしまった日付は …… 新聞で確認!
- 分からなくなってしまった最近の出来事は …… 「ああ!そうだったね!」と相手の話に相槌を打つ形でクリア
- 自分から話題を持ち出す時には …… 覚えている昔の出来事を子細に述べて健在振りを誇示 ← 認知症になっても昔の出来事はクリアに覚えています @( ;∀;)@ 寧ろ私よりも細かいわ
…… ということで、
「元気そうだね!」と、異状には気付かず立ち去ってしまうことになります。
そうして認知症と気付くのは、親御様がかなり重症化してから、ということは多々あることです。
理由③
認知症初期は、上記『瞬間タイムトラベラー』状態がそう頻繁には表れません。いわゆる『まだらボケ』状態です。
ほとんどの時間を通常の状態で過ごしています。
それが、日に3回。日に10回。と増えて行き ……
四六時中、言ったことやしたことを3秒後には忘れてしまう、という状態に行き着くのです。← 母の場合は通院させられず手をこまねいている内に、1年でこの状態になってしまいました。
日に数回、まだらに認知症状が現れている内は、その状態に出くわす確率が低いので、相手が認知症であることに気付かずに過ごしてしまいがちです。
それを普段は別居の状態で、年に数回顔を合わせたその日の内に見極めるとなったら、更にその難易度はあがります。
そこで、そのような時期であっても見極めるのに有効な、次の手段をご提案したいと思います。
認知症見極めにおすすめの方法
認知症者は、初期であっても記憶能力に異変を起こしているので、日常とは違う場面に置かれることを大変苦手とします。
そうして、例えばそういう状況に置かれた場合には強く緊張し、健常である自分を演じきれなくなり、ボロを出し易くなるのです。← 相手にとっては酷な状況を作り出すことになりますが、先々のことを考えれば相手の為の工夫です。
具体的に言えば、
自宅外のお食事処や喫茶店などに連れ出し、そこである程度の時間をともに過ごしてみると良いと思います。
- メニューは何処か?
- もう注文したか?
- 何を注文したか?
- 自分のコップはどれか?
- 後から運ばれて来た飲み物はどうしたらよいか?
- トイレに行って自席に戻る
- 支払いをする
実際に母は、自宅にいる時に比して、かなり多くの混乱振りを呈しました。
だからこそ、この方法を皆様にお勧めします。
認知症であることになるべく早い段階で気付き、ご本人に治療を受けさせることが、後々の進行を遅らせ、周囲とご本人に大きな恩恵をもたらすことになるからです。
まずは気付くことからですよ~
恐れることはありません。
次回は受診して頂くコツについてお話いたしましょう。
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